skew-T(エマグラム)の見方
観測データへ戻るskew-T とは
skew-T は「上空の空気の断面図」です。日本では「エマグラム」とも呼ばれます。 気球(ラジオゾンデ)を飛ばして測った、高さごとの気温・湿り気・風を 1 枚にまとめています。 福岡管区気象台が毎朝9時に観測したものを表示しています。
動画: ラジオゾンデ観測の様子
軸の読み方 — ここだけ他のグラフと違います
- 縦軸は高さです。左の数字は気圧(hPa)で、上に行くほど高い空 (1000 ≈ 地上、900 ≈ 1,000m、800 ≈ 2,000m)。
- 横軸は気温です。ただし skew-T では「同じ気温の線(等温線)」が右上へ45°傾いて描かれています。名前もここから来ています — skew-T = T(Temperature: 温度)の目盛りを skew(傾けた)図。
- なぜ傾けるのか: 気温は上空ほど大きく下がる(2,000m でおよそ −15℃)ので、目盛りをまっすぐ立てたままだと実測線が左下へ大きく流れ、 グラフの大半が余白になってしまいます。等温線をあらかじめ 45° 傾けておくと、 ふつうの日の気温線がほぼ縦に立って表示され、大事な「曲がり」 (逆転層や湿った層)の違いが読み取りやすくなります。
- だから点の気温は「真下」ではなく「点を通る斜めの線」に沿って読みます。 図の ●(高さ900hPa 付近)は、真下の目盛りを読むと 39℃ に見えますが、 斜めの線を左下へたどった 25℃ が本当の気温です。 最初にここでつまずく人がほとんどなので、この 1 点だけ覚えてください。
- 慣れないうちは目盛りまで降ろさなくても大丈夫です。 「線が右にあるほど暖かい」「赤と青が近いほど湿っている」 という相対的な読み方だけでも十分使えます。
グラフの主役は 2 本の実測線です。赤い線が気温、青い線が露点(空気の湿り気。用語集参照)。 2 本が近づいている高さほど空気が湿っていて、くっつく高さには雲があります。
エマグラムとの関係
エマグラムは、横軸に気温、縦軸に気圧(対数目盛)をとった大気の断面図です。 日本で使われている同じ種類の図のなかでは、いちばんよく見かけます。
skew-T はそのエマグラムを改良したもので、1947年に発表されました。 違いは等温線の引き方だけで、右上へ傾けてあります。元になる観測データは同じです。 エマグラムを読める方なら、傾いた等温線に慣れるだけでこのページを使えます。
出典: Wikipedia「エマグラム」 / Wikipedia「Skew-T log-P図」グラフの線の意味
下の一覧をタップすると、グラフ上でその線だけがハイライトされます(もう一度タップで戻ります)。グラフは最新の実際の観測です。
同じ気圧 = ほぼ同じ高さ。グラフの「床」の目盛りです。
同じ気温の線。点の気温はこの線に沿って下の目盛りで読みます。
雲のない空気のかたまりが上昇するときの冷え方(約1℃/100m)。サーマルはこの線に沿って上がります。
雲になった空気の冷え方(約0.5℃/100m)。水滴になるとき熱が出るぶん冷えにくくなります。
空気が含める水蒸気の量が同じになる線。露点からこの線に沿って上がると雲ができる高さがわかります。
その高さの実際の気温。
その高さの空気の湿り気。赤い線に近いほど湿っています。
地面で暖まって上昇する空気のかたまりの温度変化。周りより暖かい間だけ上がります。
平尾台テイクオフの標高 566m の位置。
サーマル(緑の線)はこうして引く
グラフの緑の線(サーマル)は、気球で測った線ではありません。「地面の空気のかたまりを持ち上げたら、各高さで何℃になるか」を作図でたどった線です。サーマルは持ち上がる空気なので、実際に測った気温(赤)とは別に、この 「持ち上げた空気の温度」をたどらないと、どこまで上がれるか・どこで雲になるかが分かりません。 次の 4 ステップで引きます。
- 出発点は地上の気温(赤の点)。ここから乾燥断熱線に沿って上げます。雲になる前の乾いた空気は、上がると 膨張して約1℃/100m で冷えていきます。
- もう一方の出発点は地上の露点(青の点=空気の湿り気)。 ここから等飽和混合比線に沿って上げます。これは「この空気が飽和する (=湿度100%になる)温度」をたどるガイド線です。
- ①と②がぶつかった高さが雲底です。持ち上げた空気がちょうど飽和し、 持ちきれない水蒸気が水滴になり始める=雲ができ始める高さです。
- 雲底から上は雲の中なので、サーマルは湿潤断熱線に沿って上がります。 傾きが緩くなる(約0.5℃/100m)のは、水蒸気が水滴になるときに熱を出し、そのぶん 冷えにくくなるためです。
何の役に立つのか
- この緑の線を実際の気温(赤)と見比べると、 サーマルが周りより暖かい間だけ上がれるので、上がれる高さ(サーマル上限)が分かります(詳しくは「サーマルが高い日・低い日」へ)。
- ③の折れ曲がる高さが、そのまま表の「雲底」の数値です (雲のできる条件は「雲・雨・ブルー」へ)。
- つまり表の「サーマル上限」「雲底」は、どちらもこの 1 本の作図から出しています。出発点の温度(地上がどれだけ暖まるか)が変われば線ごと動くので、 下部のスライダーで試せます。
雲底の数値は「右か左か」で意味が変わる
同じ雲底の高さでも、その高さでサーマル(緑)が実際の気温(赤)の右(まだ暖かい)か左(もう冷たい)かで、意味がまるで違います。 赤と緑の位置関係で、雲ができるか・どこまで育つかが読めます。
- 右のまま雲底に届く → サーマルが雲底まで上がりきり、実際に積雲ができます。 雲の中は飛べないので、この雲底が実質の高さの上限になります。
- 雲底より手前で左に入る → サーマルはそこで周りより冷たくなって止まり、 雲底には届きません。積雲はできず(=ブルーの日)、雲底の数値は「これだけ持ち上げれば 雲」という理論値で、サーマルだけでは届かない高さになります。
さらに雲底より上でもサーマル(緑)が赤の右に居続けるほど、雲は上へ大きく育ちます。 同じ「右か左か」で、雲ができるか(雲底の高さで右か左か)もどこまで育つか(その上で右に居続けるか)も読めます — 平らな積雲(ソアリングの目印)で止まるか、背の高い積雲(雨・雷雨のサイン)まで伸びるか、です。
これは「サーマル上限(緑と赤が交わる高さ)が雲底より上か下か」と同じ見方です。 雲の発達・雨・ブルーの詳細は「雲・雨・ブルー」、上限の読み方は「サーマルが高い日・低い日」へ。
雲・雨・ブルーの条件
鍵は赤(気温)と青(露点)の間隔です。間隔 = 空気の乾き具合。 典型的な 3 パターンを誇張した図で並べます。
雲ができる条件
空気は上昇すると膨張して冷えます(約1℃/100m)。冷えて露点まで下がると、持ちきれなくなった水蒸気が水滴に変わります — これが雲です。 つまり「湿った空気が、露点まで冷える高さまで持ち上がる」ことが条件です。 赤と青が近い(湿った)日ほど、低い高さで雲ができます。
雨が降る条件
雲が「厚く」育つことです。雲になった空気は冷えにくくなる(約0.5℃/100m)ため、 周りより暖かい状態が続きやすく、どんどん上へ育ちます。 図のように赤と青がべったり近く、かつ赤い線が左へ寝ている(上空ほどよく冷えている)日は 雲が厚く育ち、雨や雷雨になりやすい日です。 表の「雲の上端」が高い日ほど雲が育つ余地が大きいと読めます。
ブルー(雲のないサーマル日)の条件
サーマルは立つのに積雲ができない日を「ブルー」と呼びます。空気が乾いていて (赤と青が離れていて)雲ができる高さがとても高い一方、サーマル上限がその高さより低い日です。サーマルは雲を作る前に 浮力を失って止まるため、目印になる雲が出ません。表で「サーマル上限」が 「雲底(サーマル雲)」より低い日がこれにあたります。雲の目印がないぶん サーマル探しは難しくなりますが、飛べない日という意味ではありません。
サーマルが高い日・低い日
サーマル(緑)は必ず約1℃/100mで冷えながら上がり、周りの気温(赤)より 暖かい間だけ上昇を続けます。だからサーマルで上がれる高さは「赤い線の傾き」で決まります。 図は違いが分かるよう誇張してあります。
低い日の特徴
赤い線が縦に立っている(上空に行ってもあまり冷えていない)、または途中で右へ折れる 「逆転層」がある日です。サーマルはすぐ周りと同じ温度になって浮力を失うため、 サーマル上限が低くなります。曇りで地上の気温が上がらない日も、サーマルの 出発温度が低いままなので同じ結果になります。
高い日の特徴
赤い線が左へ大きく寝ている(上空ほどよく冷えている)、そしてよく晴れて地上の気温が 上がる日です。上空が冷たいほどサーマルとの温度差が保たれ、浮力が長く続いて 高くまで上がれます。下の「地上の気温」スライダーを上げたときにサーマル上限が 大きく伸びる日は、昼の暖まり次第で化ける日です。
「強さ」も同じ図から読める
サーマルの強さ(上昇の速さ)を決めるのは、地表面がどれだけ暖まるかです。サーマルの出発温度が周りの気温より 高いほど、サーマルの線は気温線の右側を大きく離れて走り、その横の開き = 浮力がそのまま上昇の強さになります(スライダーを上げると開きが広がるのが見えます)。
ソアリングの世界ではこの開きを TI(サーマルインデックス)と呼び、 約3℃でグライダーが十分上がる強さ、8℃以上なら非常に強い日、が目安です。 まとめると、同じ「開き」を 2 通りに読みます —開きの大きさが強さ、開きがゼロになる高さ(交点)が上限。
動画: サーマル前の「吸い込み風」は本当にあるのか
このページの見方
観測は福岡管区気象台の気球(毎朝9時)で、観測後まもなく自動で表示されます。 グラフは平尾台向けに、飛べる高さ(雲底の少し上)までと、その日の気温に合わせた 範囲に切り出しています。
サーマル(上昇気流の目安)が 3 本ある理由
観測は朝9時の空気ですが、サーマルが立つのは日射で地面が暖まってからです。 「理論上の最低ライン」と「今日実際に届く温度」を並べて見比べられるよう 3 本あります。 下の一覧をタップすると、グラフ上でその線と上限線だけがハイライトされます。
サーマルは地面近くの空気が周りより約2℃暖まると地面を離れて上昇し始める、と言われています。この線は「観測した空気 +2℃ = サーマルが動き出せる理論上の最低ライン」です。
今日、実際に到達しうる一番高い地上気温(ランディング付近の予報最高気温)での線。これが +2℃固定より高い温度側にあれば、日中どこかでトリガーを超えてサーマルが出る見込み。低ければ今日はサーマルの可能性が低い、と読みます。
観測ページ下部の「地上の気温」スライダーで自由に動かせる線。「あと何℃暖まればどこまで上がれるか」を自分で試せます。
それぞれのサーマル上限は同じ色の水平線と高度で示しています。 オレンジの破線はテイクオフの標高(566m)で、サーマル上限がこの線より 十分上にあるかが「上げられる日か」の第一チェックです。
表の数値の読み方
- サーマルが立つ気温 — 地上がこの気温を超えるとサーマルが雲底まで 立ち始めます。予報最高やスライダーの値と見比べてください。予報最高が届かない日は 数値の下にそう添えます。雲はできにくい日です(サーマルがどこまで上がるかは「サーマル上限」で見ます)。
- サーマル上限 — 各サーマルで上げられる見込みの高さ(3 案を併記)。
- 雲底(サーマル雲) — サーマルでできる積雲の底の高さ。 雲がある日は、ここが実質の最高高度になります(雲の中は飛行禁止)。
- 雲底の下限 — 風などで持ち上げられた場合に雲ができ始める最低の高さ。
- 雲の上端 — 雲がどこまで育つかの見積もり。高い日ほど雲が発達しやすく、 雨・雷雨の可能性も上がります。
いずれも観測とモデル計算による「めやす」です。実際の空は風・地形・日射で変わるので、 現地の観察と合わせて判断してください。
用語集
| エマグラム | 上空の気温と気圧を 1 枚に描いた図。日本での一般的な呼び名で、このページの skew-T もその仲間。 |
|---|---|
| 気温 | 空気そのものの温度。グラフの赤い線。 |
| 露点 | その空気を冷やしていったとき、水蒸気が水滴に変わり始める温度。湿った空気ほど露点が高く、気温との差が小さい。グラフの青い線。 |
| 混合比 | 空気 1kg に含まれる水蒸気の量(g)。空気が持てる水蒸気の量は温度で決まり、暖かいほどたくさん持てる。 |
| 飽和 | 空気がそれ以上水蒸気を持てない状態(湿度100%)。冷えて飽和すると雲や霧になる。 |
| 乾燥断熱減率 | 雲のない空気のかたまりが上昇するときに冷える割合。約1℃/100m。膨張して自分で冷える。 |
| 湿潤断熱減率 | 雲になった空気が上昇するときに冷える割合。約0.5℃/100m。水滴になるときに熱が出るぶん冷えにくい。 |
| サーマル | 日射で地面近くが暖まってできる、上昇する空気のかたまり。周りより暖かい間だけ上がり続ける。グラフの緑の線。 |
| 逆転層 | 上に行くほど暖かくなっている層。上昇してきたサーマルがすぐ周りより冷たくなるため、その「蓋」になる。 |
| サーマル上限 | サーマルの温度が周りの気温と同じになり、浮力を失って止まる高さ。 |
| 雲底 | 上昇した空気が飽和して雲ができ始める高さ。積雲の底。 |
| トリガー温度 | サーマルが雲底まで立ち始めるのに必要な地上の気温。表の「サーマルが立つ気温」。 |